『日本と原発』トーク

映画評 :津田大介氏 (ジャーナリスト/メディア・アクティビスト)

17/02/05

映画監督・河合弘之の三作目にして最高傑作が誕生した。

  『日本と原発』『日本と原発 4年後』に続いて題材として選ばれたのは再生可能エネルギー。世界中で同時進行的に起きている「再エネ革命」の最前線を、環境学者・飯田哲也と共に訪ね歩くことで明らかにしている。

 

 しかし、なぜ再生可能エネルギーだったのだろうか。河合は今作の冒頭でその動機を語っている。「脱原発と自然エネルギーはコインの裏表。両方同時にやらなきゃいけないことがよくわかった」

 

 「コインの裏表」とはよく言ったもので、前2作と今作は好対照をなしている。怒りや悲しみに駆動された前者と、楽しさや喜びに満ちあふれている後者。喜怒哀楽それぞれの観点からエネルギー問題を捉えることは、やがて「人はどう生きるべきか?」という哲学の問題に行き着く。今作に登場するエイモリー・ロビンスは、その一つの答えを出していると言えるだろう。いくつかある今作のハイライトシーンの一つだ。

 

 前2作でも見られたわかりやすい解説も健在。河合自らホワイトボードを使って原発推進派が喧伝する「デマ」を一つ一つ潰して行くのだが、今作では遊び心も加わっており爆笑必至。演出面でも確実に進化している。

 

 特筆すべきはドキュメンタリー映画としての構成力の高さとスケールの大きさだ。物語中盤を過ぎてからの怒濤の展開は、SF映画のようでもある。ドイツ、アメリカ、デンマーク、中国……世界各国あちこち飛び回り、桃源郷のような風景を「現実の映像」として見せることで、我々に明るい未来を指し示す─もはや河合の映画監督としての才能は疑うべくもない。

 

 米海軍・海兵隊エネルギー・環境安全補佐官のデニス・マッギンが語るように、我々は今まさに再生可能エネルギーの爆発的進化というエネルギー革命の始まりにいる。そしてその速度を上げたのは、2011年の福島第一原発事故である。皮肉なことに、日本は世界中で再エネ革命を起こすきっかけを作りながら、原発を生き残らせるためのエネルギー政策を選んだのだ。「お人好し」にも程がある。

 

 原発によって故郷を奪われた飯舘村・飯舘電力の小林稔社長のコメントも印象深かった。

「(太陽光発電所を地域に作ることで)仕事を残しておけば、いずれ次の世代が何か(飯舘村復興の道筋を)考えてやってくれるんじゃないかと」

 

 これを聞いた瞬間、なぜ河合が今作のタイトルを『日本と再生』にしたのか理解できた。「再生」は「再生可能エネルギー」と「地域(日本)再生」のダブルミーニングなのだ。ただそこにあるだけで、地域が再生する未来が見える。それが再生可能エネルギーなのだ。

 

 『第4の革命』(カール- A・フェヒナー監督、2010年)というドキュメンタリー映画がある。今作とまったく同じテーマで撮影されたドイツ人監督による名作だ。今作と併せて鑑賞する(配給元ユナイテッド・ピープルのサイトでDVDが発売中)ことで、この6年で再エネがどれだけ進化したのか、再エネのポテンシャルがどれだけあるのか理解することができるだろう。

 

 本当の「革命」はこれから起きる。「逆襲監督」の闘いはまだまだ始まったばかりだ─。

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