お知らせ

立教大学ウエルネス研トークイベント報告

15/01/20

◆ 2015年01月18日立教大学ウエルネス研究所主催トークイベントが開催されました

本日のトークイベントの主催、ならびにご参加くださいました皆様、誠にありがとうございました。
20150118rikkyo

◆ イベント報告

 

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eigaNEWSp1立教大学ウエルネス研究所公開講演会

『3.11を超えて ―今、日本の原発について考える― 』への参加報告

主催司会・進行:
『立教大学ウエルネス研究所』の濁川孝志教授 専門は健康科学分野

講演者:

映像作家で映画監督でもある舩橋 淳(ふなはしあつし)さん
『フタバから遠く離れて』

福島県双葉郡双葉町 町長 伊澤 史朗(いざわしろう)さん
双葉町役場は福島県いわき市東田町他全5カ所に役場機能が分散している。役場HP

弁護士であり映画監督でもある河合 弘之(かわい ひろゆき)
弁護士河合弘之HP

 

 

1月18日日曜日の昼、東京池袋の立教大学池袋キャンパスにて、ウエルネス研究所主催の公開講演会が開催されました。同校の濁川先生の企画・運営で、弁護士であり映画監督の河合弘之も講師の1人としてお呼びいただきました。
当日は、『フタバから遠く離れて』の監督である舩橋淳さんと福島第一原子力発電所の立地する2つの町の1つ、福島県双葉郡双葉町の町長、伊澤史朗さんも講師としてご参加になり、映画鑑賞前後に3人でトークを行う講演会となりました。
当日は500名が入るホールがほぼ満席となり、講演開始12時半から17時半頃まで、大半の参加者が途中でお帰りになることもなく映画と講演を注視してくださいました。
4人が熱く語り合ったトークを、ほんの一部ですが、ご紹介させていただきます。


この映画は、みなさんと一緒に闘うためのツールとして作ったんです

 

 

河) 僕は弁護士なのになぜ映画を作ったのか? 僕はこの映画を、みなさんと一緒に戦うために、そのツールを作りたいと思って、作ったんです。

今、いろんなところで再稼働の話があります。その議論をしていくためには、ひとつ一つ相手の議論を論破していかないと対抗できないんです。だから、これは幕の内弁当の三段重ねみたいになっている。それで2時間15分。長いです。でも本当はもっと入れたいことがあったんだけど。僕にとって一番重要なことは、日本の原発を全て止めて、日本から全ての原発をなくすことなんです。それでずっと裁判をやってきた。その中で3.11が起きた。もちろん国民の意識が変わった。当然、裁判官の意識も変わったと思っていた。

河) これまでは原発は必要だ、安心・安全キャンペーンの通りだと多くの人に思われていた。僕達のことは変なことを言う人だと思われていたわけです。でも、3.11が起きてみてそうじゃないとわかった。これまでの裁判は全部負けたけど、もう一回やろうと全国の弁護士に声をかけたんです。それで、日本全国から300人の弁護士が集まって『脱原発弁護団全国連絡会』というのを作った。
今、日本全国のほぼ全ての原発で、もう一度、差し止め訴訟を起こしているんです。
それから、東京電力の役員相手に5兆6千億円という世界で最も高い賠償請求も起こしている。ギネスブックに申請したらたぶん載ると思います。そんなことで、図らずもリーダー的な立場になってしまった。なので、使命感を持ってこの仕事を成し遂げなくてはならないと思っています。そして、僕は、これが僕の愛国心だと思っています。
一度、原発事故が起こったら、愛も芸術もみんな破壊してしまうんです。放射能は差別しない。贅沢な暮らしも、つましい暮らしも、差別なく破壊するんです。今、僕は日本で一番重要な仕事をしていると思っています。
でも今、非常に難しい状況です。アンケートをとれば7割くらいの人が脱原発だというのに、選挙をすれば自民党が大勝利する。そして再稼働だというんです。やっぱり、頼まれたいつもの人にいれちゃう。そんなねじれ現象が起きている。
こういう時にこそ裁判が有効なんです。政治で一気に原発を止めることができない。今は、仕方ないから、脱原発弁護団でひとつ一つ止めていくしかない。そうして、ひとつ一つ止めていけば、もう幾つも原発止まっているよね、電気は足りているし、最終的には、原発なんてもういらないよねとなることを願っています。

 

 

関心を薄れさせてはならない。日本の正義とは?

舩) 
映画『日本と原発』は原発を俯瞰してこれを続けていいのか?という政策論的な映画だと思うんですが、僕の映画は、双葉町に住む人達、そこに家がある人達の話です。
国際基準では絶対に住めない基準なのに、国内法でグレーゾーンになっていてそこに戻らなくてはならない。福島には今3つあって、そこに住み続けている方、住めなくなった方、遠く離れて住んでいる方がいます。なかなか、その苦しさや大変さがわからない。
関心は距離なんです。距離が遠くなればなるほど関心が薄くなっていく。昨日は阪神淡路大震災から20年の日でした。あの時、神戸は大変だなって思ったフタバの人達はまさか自分達が同じ目にあうとは思わなかった。被害にあってみるまで本当の大変さは伝わらないんです。
原子力発電は、距離が離れると人間は関心が薄れるという心理をうまく使った発電システムなんです。今、双葉町では2017年までは帰れないと言われます。じゃあ、いつになったら帰れるんですか?と聞くといつになるかはわからないと。なぜ、国はわからないと言うのか? なぜそれをみんな黙っているのか? これは日本の独特の国民性で、みんなのために我慢することはできるけど、みんなのためにこうしなくてはならないという人がいないんですね。
双葉町って本当に美しい町なんです。映画の中でも河合さんが双葉町は国破れて山河なしになってしまったと言っているけど、東京電力が撒き散らしたゴミの除染を国の環境省がやっているじゃないですか。あれは、なぜ、東電がやらないんだって話じゃないかと。
例えば、アメリカでBPがメキシコ湾で海底油田の事故を起こしました。その時、油田から出たたくさんの油が沿岸部を汚したんです。その時、米海軍が掃除したんですね。とてつもなく規模が大きい環境汚染だから私企業じゃできないでしょってことで、国が血税を使ってやらなくてはならいということになったんです。でも、その後、その環境汚染を社会悪として司法省が乗り出してきて、刑事訴追したんです。
日本だって東電じゃやりきれないから環境省がやるのはいいです。でも、じゃあ、日本の検察庁は何をやっているのかと。河合さんにお会いしたら、伺いたいと思っていたんですが、なぜ、日本は検察庁は動かないんですか?正義が欠けていると、僕は思うんですけど。

河) まさにその通りで僕は東京電力の役員を業務上過失致死傷で処罰しろと告訴しました。検察庁は予測性がなかった、予見性がなかった、想定外のことだから役員に責任はないと不起訴にしたんです。それで、津波は想定外じゃない、津波が来るとわかっていたと、東電の研究者が15mの津波が来るとトップに言ったじゃないかと検察審議会に不服申し立てをしたら、起訴相当として検察に戻した。ところが、検察はまた不起訴にしようとしている。下はわかっていたけどトップにまで伝わっていなかったから起訴できないとか言ってるんです。1月22日か23日に、また、不起訴にすると思います。
舩) 僕ね、米国に住んでたんですけど、米国はわかってたかわかってないかなんて関係ないですよ。汚したか汚してないかって言われると思うんです。汚したでしょ。汚した責任を取れということになるんですよ。
河) 本当にそうですね。
河) 伊澤さん今日の映画みてどう思ういましたか?
伊) はじめてこの映画を観させていただいたんですが、浪江は隣町ですので、出てる方たちはほとんど友人とか知り合いの方達なんですが、震災以降、はじめて映画で再会したなと感慨深いものがありました。
馬場町長とは震災前ですと5kmくらいで車で10分くらいだったんですが、私共はいわき市で、彼ら浪江町は二本松市ですから、今は車で高速使って1時間半の遠距離で……馬場さんの言葉にはいちいちそうだなそうだなと思って自分も感情が入ってしまって、同じ想いというか苦しみというのが実感としてあって、自分に置き換えて考えて観ていました。

なぜ、原発立地自治体は再稼働に向かうのか?
河) 双葉町の人達は原発なんか誘致しなきゃよかったと思っているのか、仕方ないと思っているのか、その辺はどうなんでしょうか?
伊) これは私自身の話としてお話させていただきたいんですが、3.11から今年で4回目の正月を迎えました。先ほど申し上げたように、コミュニティが崩壊した辛さは、皆さんが思っている以上の辛さだと思うんです。現在、39都道府県、300以上の自治体に避難を強いられている状況を考えると、これはとんでもない判断だったなと。
当時、映画でもありましたが、原子力発電所は安心安全、重大事故が起きた時も止める冷やす閉じ込める、五重の安全構造ということで我々は東京電力のいろいろな集まりの度に聞かされているわけですね。町民の皆さんで安全性をちょっとでも疑った人はいなかった。
現在、こういう事故にあって避難をさせられて、これは我々が思っていたものとは全然違うものだったと、今、実感として味わっています。
河) それは本当にお気の毒だと思う。でも、今、再稼働をしようとしている自治体・住民が多いんですよ。そこが問題で、こんなもの呼ばなきゃよかったと思っているのは地元の人達だけで、他の自治体の人達はあんなことを見ていながら、まだ、民宿に人が来なくなった、仕事がなくなったという理由で早く再稼働をしてくれという。これが、ものすごく重くのしかかっている。原発問題は本当に重いなと思っているんです。
舩) だからこそ僕も映画で当事者の方がどんな想いをしたのか、こんなに町ごとなくなるのっていうのを双葉町だけにフォーカスして皆さんに観ていただこうと思って、特に原発立地市町村で上映しようと思っていて……
河) あ、いいね、いいね!
舩) 皆さんね、目の前の雇用、景気ってことばっかりになっちゃってるけど、ちょっと観てみませんかって言っているんです。『フタバから遠く離れて』という映画は脱原発といっていないんです。僕は計算していなかったんですが教育委員会とかでお墨付きをくれるんです(笑)。でも、観たらどれだけ大変かって思い知るわけです。そういうことを全国で見せていきたいなと思っているです。
伊) 原発の所在市町村の話がありましたが『全国原子力発電所所在市町村協議会』というのがあるんです。全原協というんですが、敦賀の河瀬市長が会長で、私も最近まで副会長でした。
原発再稼働は、それぞれの地域でそれぞれの条件があっていろいろな重い判断をしていると思いますが、役員会の中で何度も話をさせていただいたのは、福島第一の現場を見ずに再稼働の話はやめてくれと。まず、現場を見てくださいと。その結果、昨年2月、全原協の泊原発から川内原発の首長さんまで、福島第一原発に行ったんです。福島第一の1,600μSvの中に入って、当然言いだしっぺですから私も行くのは当たり前ですし、彼らにも放射線の眼に見えない怖さを味わってもらいと思いまして。双葉町や大熊町といった事故からなんら変化のない、いわゆる復旧も復興もなされていない町も見てもらうことで、彼らに自分達が判断した結果で福島の住民と同じ思いを自分の所の住民に味わわせてはダメだということでやったのですが、残念です。その後、全原協の副会長の役職は辞職させていただきました。
舩) 変化はなかったですか?
伊) いやあ、その時、福島第一の物凄く破壊された建屋の周りで、私は首長さん達の顔を注目していたんですけど言葉はなかったです。わかってくれてるのかなって期待を持っていたんですが、残念ながら、先ほど河合監督がお話になったように、背に腹は変えられないっていうか、食べていかなくちゃならない地域なんです。原発のあるところって産業がないんです。私の町もそうでした。
そういう地域では雇用とか経済に関わるものはどうしても今のことなんです。将来が担保されてるわけじゃないけど、今現在、食べて行かなくちゃならない。雇用を含めて、発電所を止めることによって働けなくなる、生活できなくなる人がいる。原発をゼロにするなら、そこのところがキチンと議論されなければ変わらないんだろうと。
濁) 船橋さんの映画には全原協のシーンがあって、どこの市長さんもなんで早く原発再稼働しないんだよ、早くしろ、早くしろってそればっかりですよね。あれを見た時に唖然として、伊澤さんはそこに、完全アウェーの中にたった一人何も語らない顔が非常に素晴らしいことを語っていた、そういう映画だったんですよ。だから、そういう意味で、伊澤さんが果たす役割ってとても大きい。これからもその立場でできることっていっぱいあると思うんです。だからこれからも頑張ってほしいです。
濁) 僕らに何ができるのかなと考えながらずっとみていました。マザー・テレサが言った「愛の反対は憎しみではなく無関心です」キング牧師もいいましたが、我々が一番困るのは「悪人の暴力ではなくて善良な市民の無関心なんだ」。
レスポンシビリティ、責任という言葉はレスポンス(反応)とアビリティ(能力)が語源。反応する能力が責任。反応できることに反応しないのは無責任なのかなぁって。僕らに何ができるんですかね。でも、今日、感じたことを家族で話し合う、それだけでもすごいことだと思うんですよ。是非、皆さんの形で今日思ったことを伝えてください。今日はどうもありがとうございました。
映画『日本と原発』HP責任編集/作成:2015.01.20

 

 

 配布資料(双葉町 伊澤町長配布)

1/18のイベント開催日にコピーがお手元にまわらなかった「双葉町における被災の現状と復興への課題」平成27年1月 福島県双葉町作成資料で伊澤町長がご持参くださったもののpdfを作成いたしました。

以下よりダウンロードをお願いいたします。
また、映画ご鑑賞後のコメントを下記あてにコメントいただければ、ありがたいです。
鑑賞後コメント頁を作成いたしますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

双葉町における被災の現状と復興への課題_平成27年1月 福島県双葉町作成20150118 4MB

双葉町における被災の現状と復興への課題

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